「YouTube動画は-14 LUFSにすれば正解」と聞いたことはありませんか。-14 LUFSはオンライン動画でよく使われる実用的な目安ですが、すべての動画に共通する納品規格ではありません。放送、ライブ配信、SNS、企業案件では、求められる音量とダイナミクスが異なります。
この記事では、LUFSとdBFS、True Peakの違いを整理し、YouTube向け動画で迷わない開始値、Adobe Premiere Proでの測定手順、書き出し後に音量事故を起こさない確認方法を解説します。
先に結論:YouTube向けの会話中心動画なら、まず-16〜-14 LUFS Integrated、最大True Peak -1 dBTP以下を実用的な開始値にします。ただし、YouTubeの公式アップロード仕様は特定のLUFS値を必須にしていません。放送やクライアント納品では、必ず指定された基準を優先してください。
LUFSは「人が感じる音量」を見る単位
デジタル音声のピーク値が同じでも、低音が長く続く曲と短い会話では、耳で感じる音量が違います。LUFS(Loudness Units relative to Full Scale)は、周波数特性と時間を考慮して、番組全体の知覚上の音量を測るための指標です。基礎となる測定アルゴリズムはITU-R BS.1770で定義されています。
- Momentary:約400msの瞬間的なラウドネス
- Short-Term:直近約3秒のラウドネス
- Integrated:開始から終了まで、番組全体の平均ラウドネス
- Loudness Range(LRA):番組内の音量変化の幅
LUFS・dBFS・True Peakの違い
| 指標 | 何を確認するか | 主な用途 |
|---|---|---|
| LUFS | 人が感じる番組の音量 | 動画全体の音量をそろえる |
| dBFS | デジタル上のサンプルピーク | クリッピングの確認 |
| dBTP | サンプル間も含めたTrue Peak | AACなどへ圧縮した後の歪み防止 |
「ピークが0 dBFSを超えていないから大丈夫」では不十分です。非圧縮のマスターで収まっていても、AACやOpusへ変換するとサンプル間ピークが上がる場合があります。最終書き出しではLUFS IntegratedとTrue Peakをセットで確認します。
用途別の実用的な開始値
| 用途 | Integratedの開始値 | True Peak |
|---|---|---|
| YouTube・SNSの会話中心動画 | -16〜-14 LUFS | -1 dBTP以下 |
| ライブ配信 | -18〜-14 LUFSを目安に番組内で統一 | -1〜-2 dBTP以下 |
| EBU R 128準拠の放送 | -23 LUFS | 最大-1 dBTP |
| クライアント納品 | 納品仕様書を優先 | 納品仕様書を優先 |
上のオンライン向け数値は、会話が主役の一般的な動画を作り始めるための運用目安です。GoogleのYouTube公式アップロード設定は、音声コーデック、チャンネル、サンプルレート、ビットレートを案内していますが、特定のLUFS値をアップロード必須条件として示していません。そのため「-14 LUFSに届かなければ不合格」「必ず-14 LUFSまで潰す」という理解は避けましょう。
ドキュメンタリーや音楽作品で静かな場面と大きな場面の差が表現上必要なら、Integratedだけを追って過度に圧縮しないことも大切です。逆にスマートフォンで聞かれる短い解説動画は、声のShort-Termが大きく揺れないほうが聞き取りやすくなります。
Premiere Proでラウドネスを測る手順
Adobe Premiere Proでは、シーケンス全体を通るMixトラックにLoudness Meterを挿すと、完成ミックスのLUFSとTrue Peakをまとめて確認できます。
- ウィンドウ → オーディオトラックミキサーを開く
- MixトラックのエフェクトスロットからSpecial → Loudness Meterを選ぶ
- メーターをリセットし、シーケンスを最初から最後まで再生する
- Integrated、Short-Term、True Peakを記録する
- トラックゲイン、コンプレッサー、リミッターを調整して再測定する

Loudness Meterは音量を自動で直すエフェクトではなく、測定器です。数値が目標より低い場合も、マスターを一気に上げる前に、声・BGM・効果音のバランスを整えます。声の質感を作る基本は「配信の声が劇的改善|EQ・コンプレッサー・GATEの正しい使い方」も参考にしてください。
音量を整える正しい順番
- ノイズと不要部分を整理:無音部のノイズや不要な息を先に整える
- クリップゲインで素材差を縮める:話者ごとのレベル差を大まかにそろえる
- EQで聞き取りやすさを作る:不要な低域やこもりを整理する
- コンプレッサーで声の揺れを抑える:潰しすぎず、語尾が消えない範囲にする
- BGMと効果音を声の後ろへ置く:声が入る区間はオートメーションで下げる
- リミッターでTrue Peakを管理:最後の安全装置として使う
- 全編を再測定:IntegratedとTrue Peakを確認する
収録段階のヘッドルーム確保と編集段階のラウドネス調整は別の仕事です。32bitフロート録音でも最終的な音量は自動で整わないため、運用の違いは「32bitフロート録音は本当に万能か?」で確認できます。
よくある失敗
- -14 dBFSと-14 LUFSを混同する:ピーク値と知覚音量は別の指標
- 短い区間だけ測る:Integratedは全編再生して初めて意味を持つ
- 数値だけ合わせる:声がBGMに埋もれていれば聞きやすくならない
- リミッターで無理に稼ぐ:息苦しく、歪みやすい音になる
- 書き出し後を確認しない:AAC変換後にTrue Peakが上がることがある
- スマートフォンのモノラル再生を試さない:位相問題で声やBGMが小さくなる場合がある
公開前チェックリスト
- 用途と納品仕様を最初に確認した
- 全編を再生してIntegrated LUFSを測った
- True Peakを-1 dBTP以下に管理した
- 声、BGM、効果音のバランスを小音量でも確認した
- ヘッドホン、スピーカー、スマートフォンで試聴した
- 書き出しファイルをもう一度測定した
- YouTubeなら限定公開で処理後の音を確認した
まとめ
LUFSは「大きければ良い」という競争をやめ、視聴者が安心して聞ける音量へそろえるための道具です。YouTube向けでは-16〜-14 LUFSを出発点にしつつ、作品のダイナミクスと声の聞き取りやすさを優先します。放送や企業納品では、一般論より仕様書が正解です。最後はIntegratedとTrue Peakを確認し、実際の視聴端末で聞いて判断しましょう。
参考資料
- ITU-R BS.1770:ラウドネスとTrue Peakの測定アルゴリズム
- EBU R 128 Loudness
- YouTube推奨アップロードエンコード設定
- Adobe Premiere Pro:Loudness Meterで測定する


