動画を書き出す前に音量メーターを見ても、「ピークは超えていないのに小さく聞こえる」「場面ごとの音量差が大きい」と迷うことがあります。これは、瞬間的な最大値と、人が感じる平均的な音量が別の指標だからです。
この記事では、ラウドネス、LUFS、True Peakの違いを整理し、動画納品前にどの順番で確認すればよいかを解説します。納品先の基準が指定されている場合は、その仕様を最優先してください。
ラウドネスとは
ラウドネスは、人が感じる音の大きさを時間方向も含めて測る考え方です。同じピーク値でも、短い打撃音と、声や音楽が続く番組では聞こえる大きさが違います。そこで、番組全体や一定区間を測り、作品同士の聞こえ方をそろえる指標としてLUFSが使われます。

LUFSの3つの見方
Integrated:作品全体
Integrated Loudnessは、動画や番組の始まりから終わりまでをまとめて測る値です。最終納品の基準確認では、まずこの値を使います。短い無音や一瞬の大音量だけでなく、作品全体の傾向を見られます。
Short-term:数秒単位
Short-term Loudnessは、数秒程度の区間で音量変化を追う指標です。ナレーションの章ごとの差、インタビューの話者差、CMやジングルへの切り替わりを確認しやすくなります。
Momentary:短い瞬間
Momentary Loudnessは、さらに短い時間で反応します。セリフの語尾や効果音など細かな変動を見つける補助として使い、作品全体の目標値とは分けて判断します。
ピークとTrue Peakの違い
通常のピークメーターは、デジタル信号のサンプル値を監視します。一方、True Peakは再生や変換によってサンプル間に生じる可能性がある最大値まで推定します。編集画面で0 dBFSを超えていなくても、圧縮や変換後に歪むことがあるため、納品前はTrue Peakも確認します。
基準値は納品先ごとに確認する
LUFSに万能な一つの正解はありません。放送、配信サービス、広告、社内動画では要件が異なります。たとえばEBU R 128は放送番組の基準として、平均番組ラウドネス-23 LUFSとTrue Peakなどの併用を勧告しています。しかし、この値をすべてのWeb動画へそのまま当てはめるものではありません。
- 納品仕様書にLUFS、LKFS、True Peakの指定があるか
- ステレオ、モノラル、サラウンドのどれを測るか
- 番組全体か、CMなど短尺単位で測るか
- 変換後のファイルも再測定する必要があるか
動画納品前の確認手順
- 納品先の音声仕様を確認する
- メーターをリセットし、作品を最初から最後まで再生する
- Integrated LUFSとLoudness Rangeを記録する
- True Peakが上限を超えていないか確認する
- 音量調整後にもう一度全編を測る
- 最終書き出しファイルを再生し、耳とメーターの両方で確認する
声の収録段階から安定させる方法は「AI文字起こしの精度を上げる録音方法」も参考になります。収録時に声量やマイク距離をそろえると、編集での過度な補正を減らせます。
よくある失敗
- ピークだけを見て、全体の聞こえ方を確認しない
- 一部だけ再生し、Integrated値を確定したと思う
- 目標値へ合わせるため、ダイナミクスを必要以上につぶす
- 書き出し後のファイルを再測定しない
- 配信サイトの一般論を、個別の納品仕様より優先する
まとめ
LUFSは作品の平均的な聞こえ方、True Peakは瞬間的な技術上限を確認する指標です。どちらか一方だけでは、音量感と歪みの両方を管理できません。納品仕様を確認し、全編測定、調整、書き出し後の再確認までを一つの手順にしてください。
参考:EBU R 128、EBU Loudness(2026年8月16日確認)


